歯科医療従事者が新型コロナウイルス感染リスクが高いとした情報とは?
~新型コロナウイルスや歯科に関わるインターネット・マスメディアの情報~
現在TVなどのマスメディアやインターネット等では歯科に関する新型コロナ問題の情報が毎日のように出回っております。しかし、その殆どは歯科医療特有の感染対策に関する知識を十分理解していない本来の専門家が見た場合には明らかに患者さんや歯科医療従事者の不安を過度に煽るような短絡的な情報が少なくありません。
当該報告の内容を精査すると
上記2点の事柄が、歯科医師および歯科医療従事者が新型コロナウイルスを含めた多くの感染症へにかかるリスクの高い仕事であると推定された原因のようです。
しかし、このデータには歯科医院が普段から行なっている
などといった感染症対策は考慮されておりません。
つまり、実際に新型コロナウイルスに感染した方が必ずしも歯科医療従事者が多いとは結論付けていません。
もし当該記事の内容が事実ならば、歯科医療に関わる方は新型コロナウイルスに限らず、すべての感染症にかかる確率も他の職業に比べて著しく高くなるはずです。確かに過去の論文では、現在推奨されているような滅菌操作等の感染症対策を行なっていない場合、歯科医療従事者はHBV(B型肝炎ウイルス)等の強い感染力を持った感染症に罹患する可能性が高いとの報告があります。ですが、多くの論文では ”適切な感染管理を行なっていれば、かなりの確率で歯科医院での感染症を予防することができる” と結論づけております。
厳格な感染症対策を行う事は、歯科医療従事者自身の感染リスクを下げるためにも必須事項なのです。同時に、歯科医療従事者は、患者さんが保菌しているかもしれないウイルスからの感染の危険に晒されています。つまり、常に命がけで患者さんの歯を守っている事になります。
日本の人口が1億2,650万人であるに対して、歯科関係者の人口は約42万人(歯科医師:約9万人、歯科衛生士:約13万人、歯科助手ほか:約30万人)です。国内の新型コロナ感染者数が8,582人であるのに対し、歯科関係の感染者数は12人(報道発表があった人数)です。これらの数字から、日本人の新型コロナ罹患率は0.0068%、歯科関係者の新型コロナ罹患率は0.0029%であり、極端に歯科関係者の感染率が高いということはありません。しかも、1年間で日本人が交通事故にある確率は、約0.9%であるとの調査結果があります。これらを比較すると、歯科関係者の感染率の低さをご理解いただけるかと思います。また、これら歯科関係者から患者さんには感染者は1名も出ておりません。また、その後の調査によると、罹患した歯科関係者は歯科医院とは関係ない場所で感染した可能性が濃厚のとのことでした。
昨今ニュースになっております2医院でのクラスター発生についてですが、歯科治療中に患者さんから感染したのではなく、社員同士で感染したと思われます。患者さんと接するときはマスクやグローブで感染予防していても休憩時間や昼食時には外すのでその時に感染したのではないでしょうか。
1人の感染者から4人の同僚に感染したと書いてあるだけで、患者さんから感染したとか、患者さんに感染させたとかは書いていません。同僚4人が感染しているなら、その時期に受診している患者さんから陽性反応が出てもおかしくないと思いますが、出ていない。この感染経路は簡単に辿れるはずです。
その衛生士達も歯石取りはしていたでしょう。でも滋賀での感染者に受診者が出ていないのであれば、歯科治療で治療する人がマスクやグローブ等で感染防御していれば、たとえ感染者が治療したとしても、患者さんには感染しない。と考えられませんか?
歯医者のバックヤードで感染したことや大津市役所でもクラスターが発生していることを考えると、マスクやグローブをしない一般的な会社である、事務所やオフィスの方が感染リスクが高いのではないでしょうか。
歯科の病気は”予防・早期発見・早期治療”が原則です。
一部では「歯科治療は自粛」との誤解を招く記事があるようです。こちら、正しくは「歯科治療を不要不急の要件と判断するかどうかは、患者さんそれぞれの治療状態によって異なる」「そのため、歯科医師と相談のうえ個別の対応」というのが現状です(4/11現在、厚生労働省は歯科医院に対して休診を求めておりません)。
そのため、誠に心苦しくはありますが、主治医へのご相談なく患者さんがご自身の判断で治療を中断された場合、今後の状況や歯科医療の混乱状態によっては、症状が悪化された場合においても適切なタイミングで適切な治療が提供出来ない可能性もあります。必ず、担当の歯科医師や歯科医院と相談の上で、今後の通医院計画に関してはご相談してください。
とはいえ、前述のように歯科医院内での感染リスクは少ない反面、クリニックに向かう途中の道のりや日常生活内で感染症に罹患する可能性はあります。通院中の感染症リスクの予防(マスクの装着・満員電車を避ける)や日常生活で人口密度の高い空間への立ち入りを避けるといった対策が患者さんご自身では難しい場合は、誠に勝手ながら通院の自粛をお願いしております。
その他にも、持病のある方(糖尿病、呼吸器疾患といった慢性疾患)さらに喫煙者においては治療自体がハイリスクな行為となるため、併せて通院の自粛をお願いいたします。
*その他、風邪症状や季節性インフルエンザの症状が原因で体調が優れない方、肝炎やHIVの感染症の既往のある方は、受診前に必ず当医院にご相談ください。
すべての医療機関においては、「スタンダード・プリコーション」と呼ばれる考えのもと感染予防に取り組んでいます。
スタンダード・プリコーションとは、「標準予防策」とも呼ばれ、感染症の有無に関わらず全ての患者さんに対して行われる予防策です。「汗を除くすべての血液、体液、分泌物、損傷のある皮膚・粘膜は感染性病原体を含む可能性がある」という原則に基づき、手指衛生やマスク・ガウンの着用、物品の整理など様々な対策を、当院でも開業当初から行ってきました。
歯科医院でのエアゾールによって感染症に罹患する可能性はある?
歯科では、専用の機械で水を噴射し歯を削ったり、歯石を取ったりといった治療を行います。この際に発生するエアゾール(煙や霧のように微粒子が空気中に浮遊している状態のもの)が細菌を撒き散らすのではないか?といったご意見は以前からありました。特に、今回の新型コロナウイルス問題でより一層注目される事になったように感じます。
ここでも過去の報告において、新型コロナウイルスに関係するものは以下の2つの問題点に集約されます。
1)に関しては、ハンドピースの滅菌をしっかり行う事で解決出来ます。2)に関しては、文献等では、かなり微量で薄まってしまうので、感染症リスクは少ないのでは無いかとの考察があります。ただし、明らかな被害報告がないため不明であるというのが結論です。
以上から、我々の見解は「歯科医院が適切な感染管理を行い(以下参照)患者さんへ感染症に関する適切な情報の提供、協力を依頼し、感染症対策を徹底すれば、かなりの確率で感染症リスクを低下出来る」というものです。
歯科医院の感染管理の徹底はもちろんですが、患者さんのご協力が非常に重要となります。
歯科医院に行く際に、発熱やのどの痛み、せき、息切れ、倦怠感などの症状がある場合には、受診を控えましょう。尚、当院受診の際に毎回当日問診票のご記入をお願いしておりますので、ご協力の程よろしくお願いいたします。
また、下記のような症状に当てはまる方は、「帰国者・接触者相談センター」にご相談をお願いいたします。
症状が4日以上続く場合は必ずご相談ください。症状には個人差がありますので、強い症状と思う場合にはすぐに相談してください。解熱剤などを飲み続けなければならない方も同様です。
感染症拡大を予防するため、待合室でのマスク着用と手指のアルコール消毒をお願いいたします。
予約時間を守り、待合室の人数をできる限り少なくすることに協力していただき、待合室が密集し、他の患者さんと近い距離でいることを回避することができます。
もし通院を一旦休止する選択をされた患者様においては、お休みの期間中に症状が悪化しないよう、以下のようなセルフケアを推奨しております。
*感染症の拡大状況によっては、ご予約の変更をさせて頂きますのでご安心ください。