歯科診療においては、保健診療で十分な治療が受けられる、また、保険診療内で保険外診療(自費治療)とほぼ同等の治療ができると考えている患者さまがほとんどのようです。また、その二つの違いが、ただ単に使用する材料だけが異なっているだけと認識されているのが大半のようです(一部の歯科医師でさえも、この認識のもので自費治療を行っています)。しかし、これはほとんどの場合、間違った考えと言わざるをえません。
ここでは保健診療と保健外診療(自費治療)との違いと、
意外と知らない医療費控除について解説いたします。
保険診療では、歯の詰め物(プラスティック、銀パラジウム合金)や入れ歯は、半年でのやり直しが認められています。クラウン、ブリッジでは2年間の保証しかつきません。これは、保健診療での治療による結果が、半年や2年しかもたないものでも構わない、そのような低い医療の質しか求めていないということを意味します。言い換えれば、国も保健診療での質の低さに目をつぶっているということです。
何度もやり直しを重ねた結果、その再治療さえできないときがやってきます。その時は、残念ながら抜歯となります。
実際、当院の歯科医師、歯科衛生士、受付およびその家族が治療を受ける際に、一部の小さな虫歯治療以外では保険診療を選択することは、決してありません。私たちは歯科治療の中での保健治療の実情を理解し、自費治療という一番良い治療方法を知っているからそれを選びます。
患者さまの多くは、何度となく繰り返される再治療を不審に思い、何年も何十年も歯科診療を受けてきたあげく、歯を失い、その結果として、歯科医療の耐久性を信頼しなくなっているのを感じます。
歯科診療に関する不信感は、歯科医師の責任でもあります。
保険に適応されている治療とその材料的な限界、また、保険診療と同じ治療方法で材料だけが自由治療という採算重視、経済優先の歯科医師による姑息的診療が招く結果です。そのことを認識されてない患者さまが数多くいらっしゃいます。
「保険診療で十分ではないのか?」とご質問をいただくことがあります。もちろん、保険診療のすべてを否定するのではありません。保険診療であっても、治療する歯の状態により、長持ちする良質の治療が可能な場合があります。当医院にご来院される患者さまの中には、すべての治療を自由診療で希望される方がいらっしゃいます。そんな患者さまに対しても、診査診断の結果、治療必要な歯によっては保険治療で対応することをおすすめすることもございます。簡単にプラスチックを詰めることで対応できる場合や歯周病における初期段階の治療(優秀な歯科衛生士の存在が不可欠)は、保険治療で十分な治療が可能と考えております。
保険治療であっても、自由診療と同様に当院では限られた条件の中で、それなりのこだわりをもって診療を行なっています。
いろいろなメーカーのものがあります。安いものでは口のなかですぐに黒く変色するものもあります。当院では開院以来、最も高額で信頼出来るメーカーの金属を使用しています。
最も痛みの少ない細い針(31Gあるいは33G)を使用しています。
開院当初は、30分で2人の患者さまを同時に並行して治療することもありましたが、このような診療システムでは治療に集中できず、
治療効率もよくありません。現在では、一人の患者さまに対して、30分を基本に(時には1時間以上)治療予約を取らせて
いただいております。
完全予約制をとることにより、予約をいただいている患者さまの治療に集中することが可能になります。
技工物の種類により当院では4〜5件の技工所をそれぞれその得意分野により使い分けています。 技工士出身の院長だから、技工物の製作における指示も当然細かいものになります。
患者さまのお口の中に入る器具等は、勿論治療ごとに滅菌しております。例えば切削に用いるドリルの先や根管治療に使用する器具などに至るまで。
虫歯の治療や根管治療の際、必要に応じてどうしても必要な場合は、拡大鏡や顕微鏡を用いて治療いたします。肉眼よりもより正確な治療が可能になります(但し、保険治療では、その時間的制約により、毎回必ずは拡大治療は行えません。基本的に顕微鏡を用いた治療を希望される場合は、全て自由診療になります)。
日本でも患者さんのために、そのよう診療を行いたいと考える歯科医師は多くいます。 しかし、保険診療のルールの中でそのようなやり方を続けていると、経営はたちまち赤字となり、潰れてしまうのが今の歯科保険医療制度の現実なのです。
自費診療とは健康保険適用外のすべての医療の総称です。 自費診療・保険外診療とも言われます。これらは主にに日本だけで用いられる特殊な名称です。
「保険診療と自費診療の差は、材料の違いだけ」と誤解されている方が多いようですが一般的に歯科の自由診療には以下のようなものがあります。
金合金製の冠・詰物
メタルボンド冠(白い焼物の冠)
金属フレームの入れ歯
歯列矯正
インプラント
ホワイトニング
予防歯科
また、顕微鏡を用いた精密歯科治療もそのひとつです。 顕微鏡を用いる事ではじめて精密な歯科診療が可能となり、本当に価値ある自由診療が提供されます。
例えば予防歯科も、健康保険では2ヶ月に1度、15分の施術しか受けることができません。 残念ながらこの短い時間内で問題が解決する方はほとんどいません。
簡単にまとめると、自由診療とはその歯科医師が自分自身が受けたい治療、または、身内におこなう治療方法です。
歯は、一生の間に何度も再治療ができる臓器ではありません。 一度削られたり、抜かれたり、あるいは詰められたりかぶせられたりした歯は、現在のところ、二度ともとの健康であった時の歯(の状態)に戻ることができません。 一生の間に、このようなことを数回くり返すとどうなるでしょう? 次々にご自分の大切な歯を失い、最後には総入れ歯に辿り着くことになります。
自費診療の目的は精度の良い修復物を入れて、治療のサイクルを長くし生涯の治療回数を減少させることです。また、見た目を自然にしたり、より綺麗にしたりということもあります。
これは医療に限ったことではなく自動車などにもあてはまり、800万円で買ったからと言って5年間故障なく乗れるでしょうか。 また、いくら物が良くても歯磨き出来ない人の場合、修復物は問題ないけれども虫歯や歯周病で再治療になることがあります。 また噛み合わせの力によりご自身の歯の根が割れてしまうこともあります。高額な治療費だけれども、一生もたせることは極めて困難です。
「自由診療で治療すれば一生もつか?」ということを聞かれることがありますが、天然のものであるご自身の歯が保たなかったものが人工物である修復物が一生もつかどうかはわかりません。
酸性・アルカリ性のPH変化、熱い・冷たいなどの温度変化、24時間常に唾液で水浸し、さらに体重くらいの負荷がかかるという非常に悪条件、水槽の中よりはるかに条件が悪い、そんな環境で使用するのです。また、セラミックは患者さまが生きている限り殆ど変化しません。
しかし、セラミックが入っている人間の方が常に変化しています。
変化するものとは、①歯肉 ②歯槽骨 ③かみ合わせ ④顎関節 ⑤歯磨きの状況 などなど・・
だから、セラミックは変化するものの中にはいっているので、状況に応じて変化させないとならない代物なのです変化させるべき時に変化させてあげないと、
セラミックの寿命は早まります。具体的には、定期的にメンテナンスを受けて頂くことが大変重要で、時にはかみ合わせ等を調整していくことも必要となります。
保健治療で行うよりも、自費診療で良い材料・薬剤を用いて時間をかけて治療し、上手な技工士が製作したものは、同じ条件であれば、 そうでないものよりも確実に長期間使用できるはずです。そして、そこにはさらに審美面・快適さも加わるでしょう。
歯が少ない人ほど歯科医院にたくさん通っているという、不可思議なデータがあります。歯科医院に行けば行くほど、歯がどんどん悪くなっていくという矛盾した現実があるわけです。
たとえば、一般的にインプラント費用は高いという印象があるようですが、本当にそうなのでしょうか?
周りの自分の歯に影響が少なく、まるで自分の歯のように噛めるインプラントは定期的なメンテナンスをしていれば、その後大きな治療をする必要もほとんどありません。
また、治療費や診査費は医療費控除の対象になりますので、場合によっては確定申告によって半分以上戻ってくることもあります。
本質的に長期的に見た場合、決して自由診療は高いとは言えません。
インプラント、セラミッククラウン、ホワイトニング等の自費治療では、歯科医院により費用に差があります。 費用が安いにこしたことはないのですが、使用している材料、製作物の精度等をより良くしようとすると当然費用も高くなってきます。お口の中に長期間入っているものですので、安全で確実に長持ちする補綴物だけを当院では扱っております。見た目だけでなく、患者さまには見えづらい部分に手間をかけて治療をしているかが実は重要なことなのです。
保険診療は歯科医師国家試験に合格すれば行えます。卒業したての歯科医師と、卒業して20年間、特殊な技術を習得するための研修会、講習会に参加したり、最新の情報を常に得るために様々な学会(海外も含め)に参加し日々努力してきた歯科医師、どちらも同じ治療治療です。
保険診療を選ぶのも、自費診療を選ぶのも、選択するのはあくまで患者さまご自身です。 良く説明を聞き、信頼できる歯科医院を見つけるまで、数軒の歯科医院で説明をお聞きになることも良いかと思います。
保険診療には保険診療の良さがあり、自費診療には自費診療の良さがあります。どちらが良いかはその人の価値観により決定されることで、私たちは情報を提供し、患者さまが選択したその範囲内で出来る限り最善の治療を行うことです。
医療費控除とは、1月1日から12月31日までの間に、本人または家族が支払った医療費が10万円を越える場合に、確定申告をすれば税金の還付が受けられる制度です。
歯科受診の保険治療費・保険外治療費および、交通費
インプラント治療・セラミック治療・矯正治療などの自費治療だけでなく、保険診療も控除の対象です
※支払った医療費が控除の対象になるかどうか、詳しくは最寄りの税務署に確認してください。
医療費控除を申請するためには確定申告が必要です。
確定申告時(2月中旬~3月下旬)に、所轄税務署へ以下のものを持っていく必要があります。
医療費の領収書(1年分)
交通費は領収書がなくてもOKです(料金や経路を記録しておきましょう)
医療費控除の内訳書
印鑑
通帳(確定申告をされる方の名義のもの)
源泉徴収票(給与所得者)
保険金などで補てんされている金額がわかるもの
詳しくは国税局のホームページをご覧ください →http://www.nta.go.jp/